第十章 大神官救出作戦

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ダルディークは、大神官サラを攻めにくい山奥の寺院から、わざわざ草原の小さな城へと移した。
さらに、その警備には炎龍ルーラと僅かな兵を残しただけで、ダルディークは光側の居城へと進軍を開始した。
一方フェルナスは、傷の完治を待たずして、サラを救出するために急編成の光軍救出部隊と共に、草原の小さな城へと向かった。
炎龍ルーラは少ない兵とともに必死に防戦したが、急編成とはいえ大規模な救出部隊の前に、とうとう城への侵入を許してしまう。
大神官サラ救出も時間の問題だと思われたその時、突然ダルディークの本隊が城を包囲したのだった。
ダルディークはフェルナスが草原の城を攻めたと同時に、すぐさま軍勢を反転させたのだった。
ダルディーク「こんな単純な罠に、まさか本当にかかるとはな」
城を落としたはずの大神官救出部隊だったが、一転して、その城に篭城する立場となってしまったのだった。
ダルディーク「フェルナスはあのちっぽけな城の中だ、姉のサラと共に殺せ!」


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ダルディークは扉を開け、大神官サラを閉じ込めている部屋へと入った。その後に、黒龍の騎士ザーシュも続く。
広々とした部屋の中央の壁には、大神官サラが裸で磔にされていた。どうやら救出部隊は、まだここまでたどり着いていないようだった。
ザーシュ「よかった。まだ大神官は助け出されてない」
ザーシュが安堵のため息をもらすと、部屋の中へ炎龍の騎士ルーラが駆け込んできた。
ルーラ「も、申し訳ありません、ダルディーク様」
ダルディーク「何も謝る事はない。サラはこの通り無事なのだからな」
ルーラ「あ、ありがとうございます! すぐに光軍のネズミどもは始末しますので」
その時、炎龍の部下が部屋へ飛び込んで来た。
炎龍の部下「申し上げます! ただいま救出部隊の隊長が脱出を試みましたが失敗。現在は城の中庭に追いつめました!」
ルーラ「よし、分かった! ダルディーク様……」
ダルディーク「うむ。私が行こう」
ルーラ「何もダルディーク様自ら出向く相手では……」
ダルディーク「同じ事を二度言わせる気か?」
ルーラ「わ、分かりました。それでは私はここに残り、この大神官を……」
ダルディーク「いや。お前も来い……ザーシュもだ」
ザーシュ「し、しかし、誰がまた救出に来るか……」
ダルディーク「命令だ」
ザーシュ「わ、分かりました」
ダルディークたちは、大神官の部屋を出ると、中庭へと向かった。

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救出部隊隊長「ええーい、ひるむな! 一点を集中して活路を開くのだ!!」
中庭では、救出部隊の生き残りを囲んで、壮絶な戦いが繰り広げられていた。
ダルディーク「わざわざこんな城まで、ご苦労だったな」
救出部隊隊長「き、貴様は、ダルディーク!!」
ダルディーク「私自ら貴様の様な雑魚を始末してやるのだ、有難いと思え」
救出部隊隊長「ほざけ! 返り打ちにしてくれるわっ!」

(大神官救出部隊隊長と戦闘→勝利)

救出部隊隊長「ググ……これで勝ったと思うなよ!」
ザーシュ「なに?」
救出部隊隊長「今ごろはフェルナス殿が、見事、神官サラ様を助けだしているだろうよ……グハッ!」
それだけ言うと救出部隊隊長は、満足そうに息絶えた。
ザーシュ「し、しまった! ダ、ダルディーク様!!」
ダルディーク「ほうっておけ」
ザーシュ「し、しかし……ま、まさか、神官に何か……」
ダルディーク「フフフフ、これでフェルナスは死ぬ。いや、例え死ななくとも、死よりも苦しいものが待っている」
ザーシュ「…………」


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フェルナス「ね、姉さん!」
サラ「…………」
フェルナス「く、くそぉダルディークめっ! なんて酷い事を……しっかりしてくれ、姉さん!」
サラ「…………ウ、ウゥーン」
フェルナス「姉さん! しっかり!」
サラ「……ウ、ウゥーン…………フェ、フェルナス?」
フェルナス「よかった! すぐ助けるから」

フェルナスはサラを縛り上げていた鎖を必死に外し、床に捨ててあった服を着させた。
細かく震えるサラの身体を優しく抱きしめると、ゆっくりと魔法を唱え始めた。
傷ついた身体のフェルナスだが、空間移動の魔法だけは、何とか使える事が出来た。しかし、それでも身体にかなりの負担がかかるものだった。
そして、魔法で城の郊外に出たとき、その悲劇は始まった。

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フェルナス「ね、姉さん!?」
サラ「…………」
フェルナス「何をするんだ、姉さん!? 危ないから剣をしまうんだ!」
しかし、サラは何も答えず、ゆっくりとフェルナスに近づいてくる。
フェルナス「ま、まさかダルディークが……」
そう、神官サラはダルディークの術にはまり、操られているのだった。
フェルナス「姉さんはトップクラスの神官なのに……それを操るほどの能力がダルディークにはあるというのか……」
なおもサラはフェルナスに近づいてくる。
フェルナス「やめるんだ、姉さん!」
フェルナスの叫びも虚しく、サラの剣は無情にフェルナスを切りつける。
魔法を使ったためフェルナスの身体は予想以上に弱っており、思うように剣を避けられない。
フェルナス「グゥクゥッ! ね、姉さん……」
相手がサラだけに、フェルナスは何の抵抗も出来ないまま、いいように切りつけられていった。
そして、次第にサラの攻撃は激しさを増し、フェルナスの疲労は頂点に達する。
フェルナス「グワァ!!」
ダルディークにやられた肩の傷口への一撃で、フェルナスはとうとう地面にひざまずいた。
そのフェルナスの頭をめがけ、サラの剣が空を切った。
フェルナス「姉さん!!」
フェルナスが死を覚悟したとき、サラの剣が止まった。
フェルナス「ね、姉さん…………」

サラは叫び声をあげると、剣を落し、地面に崩れた。
フェルナス「姉さん!!」

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フェルナス「姉さん! しっかりしてくれ!!」
サラ「フェ、フェルナス…………御免なさい」
フェルナス「何を言ってるんだ。それよりしっかりしてくれよ、姉さん」
サラ「ダルディークは恐ろしい男よ。私も命をかけて術を破るのが精一杯だったわ」
フェルナス「なにを言うんだよ。姉さんがダルディークなんかに負けるわけがないだろ。いまはちょっと疲れただけさ」
サラ「フェルナス……優しいフェルナス。その優しさを忘れないで……人々がその優しさを忘れたとき……その時が……」
フェルナス「ね、姉さん?」
サラ「…………」
フェルナス「ねぇぇぇぇさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

フェルナスは、サラの死に叫んだ。身体中の傷も極度の疲労も忘れ、叫び続けた。
神官サラの死は、光側にとってかなりの痛手となった。
ダルディークは、神官サラ死亡の知らせを聞くと、満足そうにうなずいただけだったという。
その日以来、フェルナスは姿を消してしまった。
人々はフェルナスが逃げたと罵ったが、ダルディークは、それが自分への復讐の為だという事を知っていた。