第二五章 決戦

D'arkの画像

ダルディークは城に残っていた光軍の兵士から、フェルナスの居所を聞き出した。
フェルナスは、元レドラル城、現在はダルディークの居城になっていたその城に居るという事だった。

D'arkの画像

ダルディークはレドラルへ向けて馬を走らせた。
途中、何個もの光軍部隊に出会ったが、それを蹴散らしレドラルだけを目指した。
ダルディークに突破された光軍部隊は、次々にダルディークの追撃を始めた。
レドラルへ向かうダルディークを追う光軍は、いつしか数千の大部隊となっていた。
ダルディーク「後ろの奴らは大した事ないが、レドラルの本隊と挟まれたら厄介な事になるな」
すると、雷龍の騎士ラーディスが突然馬を止めた。

D'arkの画像

ラーディス「ダルディーク様! ここは私に御任せ下さい!」
ザーシュ「ラーディス!」
ラーディス「なーにあんな雑魚ども、俺様一人で十分ですよ!」
ダルディーク「……頼んだぞ、ラーディス」
ダルディークは、ラーディスを残し、さらにレドラルへと馬を走らせた。

D'arkの画像

ラーディスによって追撃部隊を引き離したダルディークは、ついに元レドラル城である、我が居城にたどり着いた。
城には光軍の旗が幾つもはためいており、ダルディークたちはそれを苦々しく見つめた。
ダルディーク「フェルナス……今度こそ殺す」


D'arkの画像


D'arkの画像

ダルディークたちは吊り天井の仕掛がある廊下にたどり着いた。
この廊下に侵入者が入ると、天井の巨大な石の爪が降って来る仕掛である。
ザーシュ「ダルディーク様! 安全装置が破壊されています」
ダルディーク「なに?」
ザーシュ「これでは、誰かがここでハンドルを抑えていないと、ここは通れません」
ダルディーク「まさか、自分の仕掛けた罠に苦労させられるとはな」

D'arkの画像

ザーシュ「私が抑えています。ダルディーク様は、早くフェルナスの元へ」
ダルディーク「分かった」
ルーラ「ザーシュ…………」
ザーシュ「ルーラ、ダルディーク様を頼むぞ」
ルーラ「分かったわ」
ダルディーク「行くぞ、ルーラ!」
ダルディークとルーラが吊り天井の廊下を走って行った。
自分の腕一本で支えている吊り天井の下を、何のためらいも無く通るダルディークを見て、ザーシュは熱いものを感じた。
光軍兵士「いたぞ! あそこだ!」
ザーシュ「クッ! 見つかったか」
ハンドルを支える黒龍ザーシュに、十数人の光軍兵士が取り囲んだ。
ザーシュ「おのれぇ……いま放すわけにはいかんのだ、いま放すわけには……」
光軍兵士「仲間が通りきるまでハンドルを抑える気だぞ!」
ザーシュ「絶対にこの手は放さん!」
光軍兵士「ハンドルの腕を狙え! とにかくハンドルから手を放させるのだ!」
光軍の兵士たちは、ザーシュに次々と切りかかる。しかし、片腕といってもザーシュは強すぎた。
見る間に光軍兵士は半分に減っていた。
光軍兵士「ええーい! ひるむな! 一斉に切りかかれ!」
光軍兵士の数にものを言わせた集中攻撃をくらい、とうとうザーシュの左腕からハンドルが外れた。
ザーシュ「おのれぇぇぇぇぇぇぇ!」

D'arkの画像

とっさにザーシュは回転する歯車に左腕を挟み込んだ!
ザーシュ「グゥウゥ…………」
光軍兵士「な、なんて奴だ!」
ザーシュ「フフフフ、どうした貴様ら? まさか片腕しか使えない男を恐がっているのか?」
光軍兵士「ウウゥ…………ええーい! ひるむな!! 奴は身動きがとれん! 今がチャンスだ!!」
ザーシュ「来るなら、死ぬ気でかかって来い。さもなくば…………死ぬぞ」
光軍兵士「ウクゥ…………い、行けぇ!!」

ダルディークたちが廊下を渡りきるのを待っていたかの様に、吊り天井が地響きをたてて下に落下した。
ルーラ「ザ、ザーシュ…………」
ダルディーク「行くぞ、ルーラ」
ルーラ「はい!」
ダルディークとルーラは、光軍の激しい抵抗を排除し、ようやく王の間にたどり着いたのだった。

D'arkの画像

フェルナス「ダ、ダルディーク!」
ダルディーク「迎えに来たぞ。地獄へのな」
フェルナス「おのれぇ、今度こそ止めを刺してやる!」
ダルディーク「いままでの借りは全て返す。貴様の死によってな!」
フェルナス「黙れ! もう一度封印してくれる!」

D'arkの画像

フェルナスはラームの鏡を構える。すると鏡から、また、まばゆい光が溢れ出す。
フェルナス「永遠に亜空間をさまよい続けろ、ダルディーク!!」
ダルディーク「ウヌゥ!!」
と、その時、ラームの鏡がフェルナスの手から弾けた。

D'arkの画像

フェルナス「な、なにぃ!?」
ダルディーク「この矢は……」
ラームの鏡を貫いたのは、一本の矢だった。
そう、その矢の持ち主は…………
ダルディーク「アーリア!」
ダルディークは思わずそう叫び、振り向いた。

D'arkの画像

そこには、確かにアーリアが立っていた。
しかし、それは幻影の様に透き通る実体の無いものであった。
ルーラ「アーリア…………」
アーリアはルーラに微笑むと、ダルディークに向き直った。
アーリア「ダルディーク様、世界をその手に……」
ダルディーク「約束しよう」

アーリアは満面の笑みを浮かべると、静かに消えていった。

D'arkの画像

フェルナス「こうなったら、この光の剣で、貴様を地獄に送ってやる」
ダルディーク「………………」
フェルナス「行くぞ!」
ダルディーク「フェルナス! …………貴様、死ね!!」

D'arkの画像

フェルナスとダルディーク、最後の戦いがいま始まった。
フェルナス「みんなは炎龍を見張れ! 手出しをさせるな!!」
フェルナスの部下「はい!」
ダルディーク「ルーラ! 雑魚は任した!!」
ルーラ「おまかせを!」
ダルディーク「また一段と力をつけたな、フェルナス」
フェルナス「貴様を倒すためにな」
ダルディーク「フフ、どうだフェルナス。私と組まぬか?」
フェルナス「なにぃ?」
ダルディーク「貴様の力を私に貸せ。共に真の平和な世界を築こうではないか」
フェルナス「ふざけるな! 貴様が平和だったこの島を、戦乱の渦に巻き込んだのではないか!! それを真の平和だと!? ふざけるな!」
ダルディーク「それは違うぞフェルナス。この島には、真の平和など元々無かったのだ」
フェルナス「なに寝言を言っている!」
ダルディーク「貴様こそ目覚めろ。人間が主導権を握る限り、真の平和は訪れないのだ」
フェルナス「違う! 人間は人を愛し、そして平和を愛するんだ。そんな人間だからこそ、真の平和を築けるのだ!」
ダルディーク「フン! 人間は己に無いものを求めるものだ。愛だの平和だのと軽々しく口にするのが、そのいい証拠だ」
フェルナス「なにぃ!」
ダルディーク「現に歴史が語っている。人は人と争い、そして自然をも破壊している」
ダルディーク「そんな人間どもに、果たして真の平和など創れるかな?」
フェルナス「創れる! いまはダメかもしれない……しかし、いつか人はその事に気付く時が来る。そう、人は変われる!」
ダルディーク「貴様らが変われる時間など、誰が与えると言った! それこそ人間のエゴと言うものだ」
フェルナス「違う! 人間の優しさや愛は、そんなものじゃない!」
ダルディーク「愛だと? フン! その愛するという行為の結果、貴様は何を得た? 姉を失い、そして愛する者までも失ったではないか」
フェルナス「………………」
ダルディーク「愛する者一人守れずに、何が愛だ! 貴様の幻想を聞いていると、片腹痛いわ!」
フェルナス「黙れ! 貴様さえ現れなければ、何も失わずに済んだのだ! それを貴様が、闇が壊したのだ!!」
ダルディーク「……どうやら貴様も、所詮はバカな人間と同じだったな」
フェルナス「そうだ! 俺は人間だ! だから人として、貴様を倒す!!」
ダルディーク「フン! ブタの様に死ね、フェルナス!!」
フェルナス「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ダルディーク「ぐぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

(フェルナスと戦闘→勝利)

D'arkの画像

ダルディーク「…………ムッ?」
フェルナスに止めを刺そうとしたその瞬間、ダルディークの身体が金縛りにあった。
サラ「フェルナス、いまです」
ファーナ「いまよ、フェルナス!!」
どこからか大神官サラとファーナの声が響いてくる。
ダルディーク「おのれぇ、亡者どもめ!」
フェルナス「もらったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その隙をついて、フェルナスがダルディークの懐へ飛び込んだ。
ダルディーク「ウオォォォォォォッ!」

D'arkの画像

フェルナス「や、やった!」
フェルナスの光の剣が、暗黒のよろいを突き破り、ダルディークの胸に深々と突き刺さった。
ダルディーク「ぐぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ダルディークの絶叫が、部屋の中に反響する。
フェルナス「なにぃっ!?」
しかし、その絶叫は、すぐに笑い声へと変わっていった。
ダルディーク「ダァーハッハッハッハッハッハッ!」
ダルディーク「かゆい! かゆいぞ! そんな攻撃、蚊に刺された程度だわ!」
フェルナス「そ、そんなバカな……」
ダルディーク「ハッハァー! 貴様がラームの鏡なんぞに頼った理由が、いま分かったわ! 光の剣は、死んでいる! 昔の力はもうない!!」
フェルナス「ヌヌゥゥッ!」
ダルディーク「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! フェルナァァァァァァァァァァァァァァァァス!!」
フェルナス「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


どれくらいの時がたっただろうか……。
長く冷たい静寂が、辺りを包んでいた。
最初に気が付いたのは炎龍の騎士ルーラだった。
気が付くとルーラは、城の外に倒れていた。
あの瞬間、もの凄い力に吹き飛ばされ、城の外まで飛んでいたのだった。
ルーラは身体中の痛みに耐え、城に入る。途中、倒れていた黒龍の騎士ザーシュを抱え上げたが、生きているかどうか確認はしなかった。
ルーラは、とにかくあの部屋へ行きたかった。あの人のいる、あの部屋へ……。

D'arkの画像

部屋に入って最初に目についたのは、フェルナスの顔だった。
その表情は眠っている様にも見え、また微笑んでいる様にも見えた。
ルーラは思った。なんと無心な表情なのだろうか、と……。

D'arkの画像

しかし、その胸には、暗黒の剣が深々と突き刺さっていた。
ルーラ「ダ、ダルディーク様は!?」
ザーシュ「だ……だい……じょうぶ……だ」

D'arkの画像

気が付くと黒龍の騎士ザーシュが、起き上がろうとしていた。
しかし、その左腕はまったく動かず、一人で立っている事も出来なかった。
ルーラ「ザ、ザーシュ、大丈夫?」
ザーシュ「ああ、私は大丈夫だ。それより、ほら……あそこに…………」
ルーラはザーシュの視線の先を追った。そこには…………

D'arkの画像

その瓦礫の山の影から、ダルディークが姿を現した。
ルーラ「ダルディーク様!」
暗黒の剣はフェルナスの胸から、本来あるべき主人の元へと自ら戻ってきた。
ダルディークはその剣を拾い、それでようやく身体を支えているようだった。
しかし、その瞳は輝き、顔には笑みがこぼれる。
ダルディーク「フフ、フハ……ハハハハハハ……」
ダルディークはただ笑っていた。しかし、その表情は何か大きなものを成し遂げた、達成感に満ち溢れていた。
ダルディーク「ザーシュ……ルーラよ。ラーディスを迎えに行くぞ」
ルーラ「は、はい!」

D'arkの画像

数千の敵を一人で防いだその男は、数十本の矢を身体中に浴び、それでも仁王立ちしていた。
ルーラ「ラ、ラーディス…………」
ザーシュ「こ、こいつ…………ん?」
ルーラ「え?」
ザーシュ「こいつ寝てるぞ!」

D'arkの画像

ラーディス「ガハハハハハハハ! 遅い、遅い!! あんまり待ちくたびれたんで寝ちまったぜ」
ザーシュ「殺しても死なない奴だと思っていたよ」
ルーラ「まさにバケモノね」
ラーディス「おいおい、同僚に向かって、バケモノはないだろ、バケモノは……」
ルーラ「一緒にしないでよ!」

フェルナスを失った光軍は、もはや何の抵抗力も残されていない。
こうして、この島はダルディークの手に落ちたのだった。

D'arkの画像

ダルディーク「見ろこの島を……何と小さな島なことか」
ダルディーク「こんなもので満足する私ではないぞ」
ザーシュ「世界……ですね、ダルディーク様」
ダルディーク「そうだ」

D'arkの画像

ダルディーク「この手に、世界をこの手に入れるまで、私の戦いは終わらない」
ダルディーク「決してな…………」